不倫された後、多くの人が最初にぶつかるのは、相手への怒りや悲しみだけではありません。
むしろ時間が経つにつれ、自分に対して矛先を向けてしまうことがあります。
「あの時、もっと優しくしていれば…」
「僕がちゃんとしていなかったからかもしれない」
「結局、自分のせいなんだ」
僕も妻の不倫が発覚した後、約半年間このような思考に支配されていました。毎朝目覚めるたびに「僕の何がいけなかったんだろう」と考え、夜は後悔の念で眠れない日々が続きました。
このように自分を責める思考に飲み込まれてしまうのは、とても自然な反応です。しかし、その状態が長引くと、心はどんどん疲弊してしまいます。食欲や睡眠にも影響し、仕事や人間関係にも悪影響が出ることもあります。
この記事では、僕自身が不倫発覚から離婚を経験し、何度も「自分のせいだ」と感じた日々の中で、少しずつ心を軽くできた3つの方法をご紹介します。
すぐにすべてを実行できなくても大丈夫。まずはひとつだけでも、試せるところから始めてみてください。
不倫されて自分を責める心理とは
本題に入る前に、なぜ被害者である僕たちが自分を責めてしまうのか、その心理的なメカニズムを理解しておきましょう。
コントロール幻想という心の防衛反応
人間は「自分の人生は自分でコントロールできる」と信じたい生き物です。不倫という予期しない出来事が起きた時、「自分に原因があった」と考える方が、「どうしようもない運命だった」と考えるより心理的に楽になることがあります。
なぜなら、自分に原因があるなら「改善すれば再発を防げる」と思えるからです。これを心理学では「コントロール幻想」と呼びます。
完璧主義思考の罠
特に真面目で責任感の強い人ほど、「自分がもっと完璧だったら防げたはず」と考えがちです。僕もそのタイプでした。
「家事をもっと手伝っていれば」
「残業を減らして家族との時間を作っていれば」
「もっと妻の話を聞いていれば」
でも、完璧な夫婦関係なんて存在しません。どんなに努力しても、人間関係には必ず改善点があります。
社会的な「被害者バッシング」の影響
「不倫される方にも原因がある」という言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。こうした社会的な風潮が、被害者の自責思考を強化してしまうことがあります。
でも、これは明らかに間違いです。どんな理由があろうと、裏切り行為を正当化することはできません。
① 【事実の視点】不倫は相手の選択であり、自分の価値とは別
自分を責める思考から抜け出すための第一歩は、「事実を事実として受け入れる」ことです。
不倫は、裏切った側が自ら選んだ行動です。
夫婦関係に課題があったとしても、「不倫をする」という選択肢を取るかどうかは、その人自身の責任です。他にも選択肢はいくらでもありました。
- 話し合いをする:不満や不安を正直に伝える
- カウンセリングを受ける:第三者の助けを借りて関係を改善する
- 一時的な距離を置く:冷静になる時間を作る
- 離婚を提案する:正直に関係の終了を告げる
これらの選択肢がある中で、相手は「嘘をついて他の人と関係を持つ」という道を選んだのです。
僕が「事実」を受け入れるまでの道のり
僕はこの事実を受け入れるまでに、かなり時間がかかりました。
「夫婦仲が冷え込んでいたのは自分のせいかもしれない」と思い、家事や子育てをもっと頑張れば良かったのではないか、と何度も自分を責めました。
でも、ある日友人に言われた言葉が目を覚ましてくれました。
「お前と同じような状況の夫婦なんていくらでもいる。でも、みんな不倫するか?」
冷静に考えれば、すべての夫婦が常に完璧な関係を維持しているわけではありません。疲れている時も、相手に優しくできない時もあります。それでも大半の人は、不倫を選びません。
事実を受け入れるための具体的な方法
方法1:紙に書き出す
「不倫は相手の選択」「僕の価値とは別物」と紙に書いてみてください。手で書くことで、頭で理解するだけでなく、体でも記憶されます。
方法2:声に出して言う
一人の時に、鏡を見ながら「不倫は相手が選んだこと。僕は悪くない」と声に出してみてください。最初は違和感があっても、繰り返すうちに心に浸透していきます。
方法3:比較で考える
もし親友が同じ状況で「僕のせいかも」と言ったら、あなたは何と答えますか?きっと「あなたのせいじゃない」と言うでしょう。その同じ優しさを、自分にも向けてあげてください。
② 【時間の視点】過去は変えられないが、未来は選べる
不倫被害で自分を責める思考は、常に「過去」に焦点が当たっています。
「あの時こうしていれば」
「もっと早く気づいていれば」
「あの言葉を言わなければ」
こうした後悔は、何度考えても結果を変えることはできません。むしろ、心のエネルギーを消耗させるだけです。
過去への執着が心を疲弊させる理由
僕も不倫発覚から数ヶ月間、毎晩同じ場面を頭の中で再生し続けていました。
「あの時、妻の帰りが遅いことをもっと気にしていれば」
「スマホを触る時間が増えたことに、なぜ気づかなかったんだろう」
「もっと愛情表現をしていれば、こんなことにならなかった」
過去に固執することの問題は、それが「変えられないもの」に時間とエネルギーを費やしてしまうことです。
未来に視点を移すワークの効果
ある日、心理学の本で読んだ「未来に視点を移す」ワークを試してみました。やり方は簡単です。
ステップ1:「これからやりたいこと」を10個書く
- 新しい趣味を始める
- 友人と旅行に行く
- 資格を取得する
- 運動習慣を身につける
- 美味しいレストランを開拓する
- 子どもと特別な時間を作る
- 部屋の模様替えをする
- 新しい本を読む
- 料理のレパートリーを増やす
- 家族や友人にお礼の手紙を書く
ステップ2:その中から今週できそうなことを1つだけ実行する
僕の場合、「新しい本を読む」を選びました。書店に行って、今まで読んだことのないジャンルの本を1冊買って、読み始めました。
小さな変化が生む大きな効果
たったこれだけのことですが、意識が少しずつ「これから」に向くようになりました。
過去に引っ張られる時間が減ると、心の重さも少し軽くなります。そして、「自分の人生は自分で作っていける」という感覚が少しずつ戻ってきました。
重要なのは、大きな目標を立てる必要はないということです。小さな一歩で十分。その積み重ねが、やがて大きな変化を生みます。
③ 【他者の視点】もし親友が同じ経験をしたら、どう声をかけるか
自分を責める時、人は驚くほど厳しい基準を自分だけに課しています。
他人には「そんなことないよ」「あなたは悪くない」と優しく言えるのに、自分には「もっとできたはず」「僕が情けない」と厳しい言葉をかけてしまう。
この「ダブルスタンダード」に気づくことが、自責思考から抜け出す大きな鍵になります。
「内なる批判者」の正体
僕たちの心の中には、常に自分を監視し、批判する声があります。心理学では、これを「内なる批判者」と呼びます。
この声は、幼少期からの経験や社会的な期待によって形成され、「完璧でなければならない」「失敗は許されない」といったメッセージを送り続けます。
不倫という出来事が起きた時、この内なる批判者は活発になり、「お前のせいだ」「もっとできたはずだ」と責め立てます。
親友への言葉を自分に向ける練習
僕はこのパターンから抜け出すために、「親友が同じことを経験したら、どう声をかけるか」という想像をしました。
親友が僕のところに来て、こう言ったとします。
「妻に不倫された。僕がもっとちゃんとしていれば、こんなことにならなかったんだ」
その時、僕はきっとこう答えるでしょう。
- 「お前は十分頑張ってたよ」
- 「悪いのは裏切った相手だ」
- 「完璧な人間なんていない」
- 「お前には価値がある」
- 「この状況はお前のせいじゃない」
そうすると不思議なことに、こうした優しい言葉が自然と出てきます。
セルフコンパッションの実践
この親友にかける言葉を、そのまま自分に向けて言ってみてください。最初は抵抗があっても、繰り返すうちに心の中の「自分への裁判官」が少しずつ静かになります。
これを心理学では「セルフコンパッション(自分への思いやり)」と呼びます。米ハーバード大学の研究によると、セルフコンパッションが高い人ほど、ストレスに強く、回復力も高いことが分かっています。
セルフコンパッションの3つの要素
- 自分への優しさ:厳しく批判するのではなく、理解と優しさで接する
- 共通の人間性の認識:苦しみは人間として当然の経験だと理解する
- マインドフルネス:感情に飲み込まれず、客観的に観察する
実践的なセルフコンパッション・エクササイズ
エクササイズ1:親友への手紙を自分に書く
親友が同じ状況にいると想像して、その人への励ましの手紙を書きます。そして、その手紙の宛名を自分の名前に変えて読み返してみてください。
エクササイズ2:自分に優しい声かけをする
自責的な考えが浮かんだ時、「大丈夫、よく頑張ってる」「完璧である必要はない」と自分に声をかけてみてください。
エクササイズ3:身体的な慰め
胸に手を当てて、深呼吸をしながら「今、苦しいけれど、この気持ちも受け入れよう」と心の中で言ってみてください。
これらの方法を日常に取り入れるコツ
3つの方法をご紹介しましたが、「分かったけれど、実際にどう始めればいいの?」と思う方もいるでしょう。
ここでは、これらの方法を無理なく日常に取り入れるためのコツをお伝えします。
小さく始めて、継続することを重視する
完璧を目指す必要はありません。まずは1つの方法を、1日5分だけでも試してみてください。
朝の習慣として:起床後に「今日は何に集中しよう?」と未来志向の質問を1つする
夜の習慣として:寝る前に「今日頑張ったこと」を1つ自分に認めてあげる
辛い瞬間に:「もし親友だったら何と言うかな?」と自分に問いかける
後戻りしても大丈夫
自責思考は一朝一夕には変わりません。良い日もあれば、また自分を責めてしまう日もあるでしょう。
それは回復の正常なプロセスです。後戻りしたからといって、諦める必要はありません。また今日から、小さな一歩を踏み出せばいいのです。
進歩を記録する
小さな変化でも、記録しておくことで「確実に前進している」という実感が得られます。
「今日は自分を責めずに済んだ」
「未来のことを考える時間が増えた」
「自分に優しい言葉をかけられた」
こうした小さな勝利を積み重ねることで、自信も回復していきます。
📖 思考整理におすすめの方法
自分を責める思考を客観視するために、僕は「思考日記」を始めました。ネガティブな考えが浮かんだ時に、それを書き出して「これは事実か、それとも感情か」を分析する習慣です。シンプルなノートがあれば十分で、1日5分程度の作業でも効果を感じられました。
まとめ:自分を責める必要はない、あなたは十分頑張っている
不倫されて自分を責める気持ちは、誰にでも起こる自然な反応です。しかし、そのまま放置すると、あなたの心と体を消耗させ続けます。
今日からできることは、この3つです。
- 【事実の視点】不倫は相手の選択であり、自分の価値とは別と理解する
- 【時間の視点】過去ではなく未来に視点を移す
- 【他者の視点】親友にかける言葉を自分にもかける
これらはすぐに完全にできる必要はありません。小さな一歩を積み重ねていけば、必ず心は軽くなっていきます。
あなたは一人じゃない
最後に、これだけは忘れないでください。
あなたは十分頑張っています。そして、一人ではありません。
同じような経験をした人が、この世界にはたくさんいます。みんな、あなたと同じように苦しみ、そして少しずつ立ち直っています。
今は辛くても、必ず光が見えてくる日が来ます。その日まで、どうか自分を責めすぎずに、優しく接してあげてください。
今夜、この記事を読んだあなたができること
もしあなたがこの記事を読んで「少し気持ちが楽になった」と感じたなら、今夜寝る前に一つだけ試してみてください。
「不倫は相手の選択」と紙に書いてみてください。
たった一行でも構いません。その小さな一歩が、あなたの回復のスタートです。
明日の朝、その紙を見た時、きっと昨夜より少しだけ心が軽くなっているはずです。
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あなたの心が少しでも軽くなり、明日への希望が見えてくることを心から願っています。
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