離婚してはじめて「養育費」という現実に向き合った
離婚協議のなかで、「養育費、いくらにするか」という話は避けて通れません。
でも正直、僕は最初ピンときませんでした。
「とりあえず払うつもりはあるけど…どれくらいが妥当なんだろう?」
そんな状態で話し合いが始まり、最終的に月5万円で合意。今でもその金額を毎月振り込んでいます。
当時の僕は、養育費について詳しく調べることも、誰かに相談することもせず、ただ漠然と「払わなければいけないもの」程度の認識でした。今思えば、もう少し真剣に向き合うべきだったのかもしれません。
でも、当時は離婚そのものの手続きに追われ、感情的にも不安定で、「とにかく早く決めて前に進みたい」という気持ちが強かったのも事実です。
今回はその経験をもとに、養育費の決まり方と僕のリアルな気持ちを綴ります。これから離婚を考えている方、特に養育費について悩んでいる方の参考になれば幸いです。
養育費の基本的な仕組みを知っておこう
養育費とは何か?
まず基本から。養育費とは、離婚後に子どもを育てていない親が、子どもを育てている親に対して支払う「子どもの生活費」のことです。(この認識は非常に重要だと思っています)
注意したいのは、これは「元配偶者への慰謝料や生活費」ではないということ。あくまで「子ども」のためのお金です。この認識をきちんと持っておくことが、後々の心理的な負担を軽くしてくれます。
僕も最初の頃は、「元妻にお金を渡している」感覚でいました。でも実際は、「子どもの生活のためにお金を出している」のが正しい理解です。この違いは思った以上に大きく、支払いに対する気持ちの持ちようが変わってきます。
法的な義務でもある
養育費の支払いは、法的にも義務とされています。「親の扶養義務」に基づくもので、離婚しても子どもに対する責任がなくなるわけではありません。
だから、「もう他人になったんだから関係ない」という考えは通用しません。子どもが成人するまで(場合によってはそれ以降も)、親としての責任は続きます。
養育費はどうやって決まる?
「算定表」が基本の指標
養育費の金額は、「算定表」と呼ばれるものをもとに決められるのが一般的です。
この算定表では、以下の要素を元に養育費の目安が算出されます:
- 自分(支払う側)の年収
- 相手(受け取る側)の年収
- 子どもの人数と年齢
例えば、僕の場合は会社員で年収400万台、元妻はパート勤務で年収100万台、子どもは1人(当時小学生)という条件でした。
この条件で見ると、だいたい月4〜6万円の範囲が妥当とされるようで、話し合いの末「月5万円」でまとまりました。
裁判所のホームページにも最新版の算定表が載っているので、気になる方はチェックしてみてください。ただし、算定表はあくまで「目安」であって、絶対的なものではありません。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
算定表以外で考慮される要素
算定表だけでは決まらない場合もあります。例えば
子どもの特別な事情
- 私立学校に通っている
- 習い事や塾の費用が多い
- 医療費がかかる病気や障害がある
親の事情
- 住宅ローンの負担が大きい
- 再婚して新しい家族がいる
- 病気や怪我で収入が不安定
僕の場合、子どもが通う学校は公立でしたし、特別な医療費もかからない状況だったので、算定表の範囲内で話がまとまりました。
でも、もし私立学校の学費や特別な習い事の費用などがあれば、また違った話し合いになっていたと思います。
話し合いの進め方
養育費の話し合いは、できれば冷静に、そして建設的に進めたいものです。
僕たちの場合、最初はお互い感情的になってしまい、なかなか話が前に進みませんでした。「そんなに払えない」「子どもの将来を考えてほしい」といった感じで、しばらく平行線が続いたんです。
ここで、第三者(行政書士さんなど)に入ってもらえていたら、話がスムーズになっていただろうな。と今では思います。
感情論ではなく、客観的な数字やデータを基に話し合えるような状況が必要です。
今どきは、ココナラというサービスから気軽にWEBやアプリで、離婚協議書のプロに相談することもできるみたいなので、こういったサービスを利用するのもいいと思います。
僕が払っている「月5万円」の内訳と背景
公正証書に記載した内容
公正証書に記載した内容は、以下の通りです。
- 支払金額:毎月5万円
- 支払期限:毎月25日まで
- 振込方法:元妻の指定口座に振込
- 支払い期間:子どもが20歳になる月まで
- 減額・増額の条件:お互いの収入が大幅に変わった場合は協議する
- 滞納時の取り決め:3ヶ月滞納した場合は一括請求も可能
最初は「20歳まで」で設定しましたが、今思えば「大学進学」のことも考慮しておけばよかったかもしれません。20歳で大学生だった場合の取り決めが曖昧になってしまったからです。
月5万円の重み
収入に対して決して軽い金額ではありません。特に、ひとり暮らしになって家賃や生活費をフルで負担するようになると、月5万円の重みを実感します。
僕の手取りが月25万円程度なので、養育費で5万円、家賃で7万円、食費や光熱費で5万円…残りは8万円程度。決して余裕があるとは言えない状況です。
ボーナス時期は少し楽になりますが、普段の月はかなりタイトな家計です。友人との飲み会を断ったり、趣味の出費を控えたりすることも増えました。
でも、払うこと自体に後悔はしていません。
「子どもに会えない日々の中で、自分にできる唯一の責任の形」
そう思うようにしています。
支払い方法と心理的な影響
毎月25日に振込をしています。給料日が20日なので、5日後には必ず振り込むルーティンになっています。
最初の頃は、振込画面を見るたびに複雑な気持ちになりました。「これで元妻が何を買うんだろう」「本当に子どものためだけに使われているのか」といった疑念が頭をよぎったこともあります。
でも今は、「子どもの生活の一部を支えている」という気持ちで振り込めるようになりました。この心理的な変化は、時間とともに自然に起こったものです。
養育費を決めるときに注意すべきこと
支払う側として気をつけるべきポイント
振り返ってみると、危ういところもありました。支払う側として僕が実際に経験した「気をつけるべきポイント」をお伝えします。
✔ 曖昧にしないこと
「とりあえず◯万円で、後で変更しよう」はNG。
収入や状況が変わっても、簡単に変更はできません。
僕たちも最初は「とりあえず3万円から始めて、様子を見て増額する」という話になりかけました。でも、行政書士さんに「後で増額合意を得るのは難しい」と指摘され、最初からきちんと決めることにしました。
結果的に、この判断は正解だったと思います。
✔ 具体的な条件を決めておく
「月◯万円」だけでなく、以下のような細かい条件も決めておくべきです
- 支払日:いつまでに払うか
- 支払い方法:振込か手渡しか
- 振込手数料:どちらが負担するか
- 滞納時の取り決め:遅れた場合の遅延損害金など
- 収入変化時の対応:転職や昇給時の取り扱い
僕の場合、振込手数料は僕が負担することにしました。月220円程度ですが、年間で考えると2,640円。小さな金額ですが、事前に決めておかないと後で揉める原因になります。
✔ 公正証書は支払う側にもメリットがある
「払ってくれない」と揉めるケースは多いですが、支払う側にとっても公正証書は重要です。
僕の場合、公正証書にしていたことで「きちんと支払っている証拠」として安心感がありました。
公正証書の作成には費用がかかりますが(僕の場合は約3万円)、後々のトラブルを考えれば必要な投資だと思います。
支払う側としても、「言った・言わない」のトラブルを避けられますし、支払い条件が明確になることで計画も立てやすくなります。
第三者を交えることの重要性
僕たちの場合、行政書士さんに入ってもらったことで話し合いがスムーズになりました。
当事者同士だと、どうしても感情的になってしまいがちです。「あの時あなたが…」といった過去の話に脱線したり、「そんなお金ない」「子どもの将来を考えて」といった平行線の議論になったり。
第三者が入ることで、客観的な視点から話し合いを進められます。費用はかかりますが、その価値は十分にあると感じています。
養育費を払う側のリアルな気持ち
複雑な感情との向き合い方
毎月5万円の支払い。
冷静に見れば、「子ども一人育てるには必要な金額」かもしれません。
でも、月に一度の短い面会だけで、日常には関われない。
ふと、「何のために払っているんだろう?」と思ってしまう瞬間もあります。
特に、疲れている時や仕事がうまくいかない時、お金に余裕がない時などは、そんな気持ちが強くなってしまいます。
子どもとの関係が見えにくい現実
一番つらいのは、その5万円が子どもにどう使われているのか、実感しにくいことです。
面会の時に新しい服を着ていたり、習い事の話を聞いたりすると、「あ、養育費がこんな風に使われているんだな」と実感できます。でも、そういう機会は月に一度だけ。
日常的には、銀行口座から5万円が消えていくだけの作業になってしまいがちです。
気持ちを整える方法
そんなときに自分に言い聞かせている言葉はこれです。
養育費は”元妻のため”ではない。”子どもが安心して暮らすため”のものだと。
この考え方に変わってから、支払いに対する気持ちがだいぶ楽になりました。
また、面会の時に子どもから聞く学校の話、友達の話、将来の夢の話などを聞いていると、「この子が安心して成長できる環境作りに、自分も貢献できているんだ」と思えるようになりました。
周囲の理解について
意外と難しいのが、周囲の人たちの理解です。
友人の中には「毎月5万円も払ってるの?大変だね」と同情してくれる人もいれば、「それくらい当然でしょ」という反応の人もいます。
どちらの反応も間違いではないのですが、当事者としては複雑な気持ちになることも。
最近は、あまり周囲に詳しく話すことは控えています。理解してもらうのは難しいし、かえって気持ちが乱れることがあるからです。
養育費の未来について考える
子どもの成長とともに変わる状況
子どもは今小学校高学年ですが、これから中学、高校、大学と進学していきます。
算定表では20歳までの設定ですが、もし大学に進学する場合、学費の負担はどうなるのか。私立大学だった場合、現在の5万円では到底足りません。
公正証書には「大幅な収入変化があった場合は協議する」とありますが、子どもの進学についてももう少し具体的に決めておけばよかったと反省しています。
自分の収入変化への対応
僕自身の収入も、今後どうなるかわかりません。昇進して収入が上がることもあれば、転職や病気で下がることもあるでしょう。
そういった変化に対して、どう対応していくか。相手との話し合いがスムーズにいくか。これは今後の課題だと思っています。
子どもとの関係作り
養育費を払い続けることで、子どもとの関係がどう変わっていくか。
今は月に一度の面会ですが、子どもが思春期になったら、会いたがらなくなるかもしれません。でも、養育費を通じて「お父さんは自分のことを気にかけてくれている」と感じてもらえたらと思っています。
後悔しないために今できること
記録をつけておく
僕は毎月の振込時に、簡単な記録をつけています。
- 振込日
- 金額
- 振込先
- 面会の状況(あれば)
これは万が一のトラブル時の証拠にもなりますし、自分自身の気持ちの整理にも役立っています。
子どもとのコミュニケーションを大切にする
月に一度の面会では、できるだけ子どもの話を聞くようにしています。
学校のこと、友達のこと、好きなこと、将来の夢。そういった日常的な話を通じて、子どもがどんな環境で育っているかを知ることができます。
そして、そういった話を聞くことで、「養育費がこの子の生活を支えているんだ」という実感も得られます。
定期的な見直しの機会を作る
公正証書で取り決めた内容も、時間とともに現実に合わなくなることがあります。
僕たちは年に一度、子どもの誕生日頃に「現状の確認」をするようにしています。収入に大きな変化がないか、子どもに特別な出費が必要になっていないか、など。
大きな変更が必要になることは今のところありませんが、定期的にコミュニケーションを取ることで、お互いの状況を把握できています。
まとめ:自分のためにも冷静に決めよう
養育費は、ただのお金ではありません。
「子どもへの責任の証」であり、「将来の自分が後悔しないための決断」だと僕は思っています。
だからこそ、曖昧にせず、感情に流されず、きちんと話し合って取り決めることをおすすめします。
最後に伝えたいこと
離婚時は精神的にも不安定で、とにかく「早く決めて前に進みたい」という気持ちが強くなりがちです。僕もそうでした。
でも、養育費は長期間続く話です。子どもが成人するまでの10年、15年、場合によってはそれ以上。
その長い期間を考えて、しっかりと取り決めをしておくことが、結果的に支払う側の自分のためにもなります。
明確な条件があることで、支払う側も計画的に家計を管理できますし、相手との無駄なトラブルも避けられます。お互いが納得できる形で決めることで、子どもにとっても安定した環境を提供できるはずです。
次回は、僕がどんな風に「子どもと向き合っているか」について書こうと思います。
月に1回しか会えない中でも、関係をつなぐためにやっていることをお伝えします。
この記事は僕の実体験に基づいて書いています。養育費の金額や条件は、それぞれの状況によって異なります。
詳しくは専門家にご相談することをおすすめします。
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